まずは、プライスさん有難う。 あなたは、お金持ちで、若かりし頃、本当はスポーツカーを買うはずだったお金で日本画を購入なさった。ナイス選択。 そして、日本画を如何に見れば魅力的かを非常に良く分かっていらっしゃる。日本人よりも。 今回の展示は、伊藤若冲の絵画が目玉とされていた。 もちろん、あの『鳥獣花木図屏風』のまるでアフリカンアートのような世界観と升目描きは度肝を抜かれた。 『鶴図屏風』のあの線の勢いには楽しんで描いているのが伝わってきたし、その線自身も潔く美しくかった。 鶏は雄雄しく美しい。豪華絢爛な鶏だった。 『葡萄図』の葡萄の葉のたらし込みの部分は美しく目を引き付けた。恐らく、描いた当初は、あれよりも更に色も鮮やかなグラデーションであっただろう。(しかし、そういった意味ではやはり若冲の絵が印象に残ってるんだな) が、今回の本当の目玉はそれよりなにより、展示の仕方にある。 すべての作品に対してではないが、プライス氏の意向により、照明に工夫を施した展示となっている。 僕は、日本画の見方に非常に不満があった。大体、掛け軸なり、屏風なりがガラスケースに入っており、そして何より蛍光灯のような照明に煌々と照らされている。 保存の為、致し方ない点も大いにある事と思う。が、しかし、他の絵画も扱いはほぼ同じかもしれないが、日本画に対しては、もっと違う状況下で一度見てみたいものだと思っていた。しかし、現代の日本ではちょっと難しい。 そんな中、理想な展示をしているところもある。美術館ではないが。四国は高知の絵金祭がそれだ。まだ見に行っていないが。その祭の日には夜、町の通りに金蔵と言う絵師の屏風絵が飾られ、その絵を照らすのは照明器具ではなく、蝋燭。揺らめく火の光の中で屏風絵を眺める。これが理想だと思う。 つまりは、その絵が描かれた当時と同じ状況下で見てみたいと思うのだ。日本画は、絵であり、調度品でもあった。当時の人々は恐らく、それほど強い明かりの下でそれらの作品を見ていなかったはずだ。日常の光、太陽光、月明かり、行灯の光、雪明り。その中にあってこそ、日本画は魅力を発揮するはずだ。そんな明かりの下で、日本画を見たい。 そう思っていた。 そして今回、プライス氏によってそのチャンスはもたらされた。 もちろん、行灯の明かりで見れたわけではないが、一部の作品に限り、ガラス無しで、明かりは、朝・昼・夜をイメージした照明によって照らし出された。 その明かりの下で見る屏風絵は、予想以上の美しさだった。 金箔が、照らされた明かりによって絵に変化をもたらす。朝は爽やかに、夜は妖艶に。なんと表情豊かな事か。そして、それと同時に光の照り返しが美しい。もしかしたら、屏風は昔照明代わりであったのかもしれない。 ああ、満喫した。良かった。本当に良かった。 この感動を一緒に行った友達に話したが、あまり反応してもらえなかった。ちょっと寂しかった。
by skullscafe
| 2006-08-21 21:35
| 展覧会
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