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カテゴリ:本( 11 )

九十九怪談

 先日、とある本屋を物色していましたら、とある本が目につきました。

『九十九怪談 第一夜』

 文庫です。
 新耳袋の続編と言えるシリーズです!
 知りませんでした。
 続いていたのですネェ。
 新耳袋が完結したので、終わりかとガッカリしていたのです。
 新耳袋は毎年夏頃文庫を買っては読んでいました。
 
 そして九十九怪談、なんと3冊出ている様子!
 2、3巻は文庫ではまだ出てないみたいですが・・・
 むー・・・文庫が出るまで待ちたいが・・・こ・・・これは・・・読みたい!すぐ読みたい!

 昔から怪談が好きでした。
 小学生の頃などは近所のお姉さんに怪談を話してくれるようにせがんだものです。
 夏休みになればもちろん昼間からテレビで『あなたの知らない世界』を見ました。(最近はやってないんですかね)
 人一倍怖がりなくせに怪談は大好物でした。(ホラー映画はいまだに勇気を振りしぼらないと見れません)

 そんなわけで、九十九怪談。もうその日のうちに読んでしまいました。
 今ひとつパンチが弱かった気がします。山の牧場くらいインパクトあるものをついつい期待してしまいます。
 もう一回読み直してみますかね。
 しかし、連続では読まないようにしています。 
 新耳袋も、九十九怪談も、構成は百物語の形を取っていると言われています。
 百物語は1人1話ずつ話して蝋燭を消していきます。そして、100話話し終え、最後の蝋燭を消すと何かが起こると言われています。
 そんなわけで、新耳袋も九十九怪談も休み無しで読み終えると100話話を聞き終えたのと同じとされていて、つまりは、本を読み終えた後に何かが起きると言われています。
 本当かどうかいざ知らず。
 オカルトと笑い飛ばすのは容易いですが、念には念をおして。ね。怖いの嫌いなので・・・。
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by skullscafe | 2010-06-28 23:44 |

『流星ワゴン』

 一気に読んでしまった。『流星ワゴン』。
 なんとまた切ない話か。
 僕は、痛い話とかシンドイのである。妻の浮気とか、子供の家庭内暴力とか家族崩壊とかガンとか事故だとか死んだとかシンドイ。
 で、この話もそーゆー話で、シンドイ。シンドイけれど、気になって気になって仕方なく、気がついたら読み終わっていた。
 臨死(?)体験により、死んだ親子が運転するワゴンに乗って過去を辿る旅をする事になった主人公。、自分が知らなかった過去を知り、衝撃を受け、悩み苦しむ。知りえなかった過去を知り、それを変えて行くことが出来るのか?と言う話。
 切ないねぇ・・・。過去を知ってもそれを変えることはできない。その事実を知り自分はどう行動するか。振り返れば、あの時のあの瞬間は実は大事な人生の分岐点だったのだと後になって知る。あの時ああすれば良かった。今になって思うことは数知れず。後悔、反省、しても良い。しかし、それを次の一歩に替えて行かねばならない。もしかしたら、将来、過去を振り返ったら今が大事な分岐点なのかもしれない。
 人生に遅すぎたなんて無い、事も無いが、何とかいい方向へ持っていこうと行動する事は出来るって事か。そんなことを考えた。
 しかし、この人の本は皆こんな暗いテーマなのかなぁ。とは言え、今回の本は『疾走』ほど重くない。だからと言ってハッピーでもないが。

流星ワゴン
重松 清 / 講談社
ISBN : 4062111101
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by skullscafe | 2006-06-10 15:53 |

きょうのできごと

今日は意外と忙しかった。

多分、明日も結構忙しい。

朝、友人よりメールをもらった。子供がついに生まれた。おめでとう。
しかしアイツが父親か・・・驚くべき事でもある。これを機会にガンプラ大人買いを控えるようになる事を切に願う。いや、それでやめられたらそれはそれで寂しいものがあるが。あの頃のお前はどこ行っちゃったんだよ!?みたいな。

帰りの電車で小説を読む。『きょうのできごと』。行定勲監督の同名映画の原作。小説だったことを今日初めて知る。
まだ途中だが映画と同じように緩やかな、ちょっと嫉妬するくらい幸せな雰囲気に包まれている。きっとおたまじゃくしの卵の中はこんな感じなのだろう。

きょうのできごと
柴崎友香 / 河出書房新社
ISBN : 4309407110
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by skullscafe | 2006-06-08 22:02 |

『悲しみの歌』遠藤周作

『悲しみの歌』読了。

 この本は位置づけとしたは『海と毒薬』の続編に当たるらしい。
 らしいと言うのは、そちらも読んだのだがちょっと前のことで記憶に無いのだ。

 舞台は新宿で、そこで細々と開業している勝呂(スグロ)と言う名の医者と彼を取り巻く人々の話。この医者は戦時中、捕虜を使った人体実験の現場に立ち会った戦犯である。この過去を執拗に取材する新聞記者。ささやかな暮らしを望んでいるだけの勝呂医師の上にその過去が時を経て尚重くのしかかってくる。

 舞台である新宿は僕にとっても馴染み深い場所である。なので、ある程度はその場面を具体的に想像できる。ゴールデン街、花園神社、区役所通り・・・。そういった面でもなかなか興味深く読めた。
 しかし、舞台の新宿は当然ながら今の新宿とは違う。まだ、新宿が新宿らしかった時代の話。“らしかった”とは何か。それは僕が憧れたバイタリティ溢れる新宿。もちろん、そこには主観が思いっきり入っているが、お分かりいただけるだろうか。蜷川幸雄が映画館で芝居をやっていた頃の、五木寛之が『青春の門』で書き綴った時代の、新宿。妖しくて混沌として妖怪のような街。その時代のその町はそんなイメージがある。今の新宿はなんだかとても疲れて見える。
 そんな街が舞台だ。昔の新宿かぁ、なんて読んでいると、若い連中は本当の新宿をしらんのだ、というような意味合いの演説をぶつキャラクターが出てきて面食らう。闇市で人が溢れ、カストリやバクダン飲んでた時代を知らんだろうと、言うのだ。戦後間も無い新宿。そんな、戦後の苦しい時代を下敷きにその時代の新宿は成り立っている。
 昔のことは分からない。やはり、知る事が必要なのだろうか。そんなこと知らずとも生きていける。知らないほうが良いこともある。勝呂医師の過去のように。
 僕の馴染みのある現代の新宿もまた、彼の時代の新宿を下敷き成り立っている。僕もまた僕の踏んづけている地面の下に眠る歴史を知らない。
 その街の、もしくはその場所の過去に何があったのか、本当に分かっている人はそういない。 また、それと同じように、人が何を抱え、なにを思っているかを、本当に分かっている人もそういない。
 人を許すと愛する事助ける事、それらもまた同じように、真の許し、真の愛、真の救済といのも行う事は非常に難しい。
 人は、少しずつしか物事に関わっていく事ができない。今の時代を生きる僕は先人達の生きた時代とは違う。僕がいかに相手の事を思おうとその人にはなれない。その為、間違いが起こる事もあるが、だからこそ、理解したいと心が動き思いが生まれる。それが愛なのかもしれない。
 ・・・と、言う事を言っているのかな、この本は。

 重たい話ではあるが非常に文章的にも読みやすく、構成的にもテンポが良い。祭と医院内を対称的に描く行は震えた。文章を読んで人は鳥肌がたつこともあるのだ。

悲しみの歌
遠藤 周作 / 新潮社
ISBN : 4101123144
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海と毒薬
遠藤 周作 / 新潮社
ISBN : 4101123020
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↑これもあわせて読むと良いかも

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編
スティーヴン キング Stephen King 浅倉 久志 / 新潮社
ISBN : 410219312X
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↑あとこんなのもあわせて読むと良いかも
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by skullscafe | 2006-06-04 01:50 |

『神様からのひと言』

 『神様からのひと言』読了。ちょっと前に。

ストーリー
 大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。 
(セブンアンドワイより抜粋)

 軽快でツラツラ読める。単純に面白いし爽快な場面もある。暗い内容の小説ばかり読んでいたところだったので、気分転換にもなった。
 話の中に出てくる会社の人間模様が、結構何処の会社でもあるのかなぁと思わせる。上層部に媚びへつらう中間管理職。社内でしか通用しない変な風習。革新的なことをやろうとしてるように見えて、ただ音の派手なだけのしょぼい花火みたいな事業改革とか。意外と、共感してしまう。ミラー細胞反応。ミラーマーン。
 また、仕事とプライベート、両方をバランス良く描いている。明確さが良さに繋がっていく。
 作者は、『明日の記憶』という映画にもなった小説書いてる荻原浩と言う人。『明日の記憶』というのは読んで無いんだが、有名らしい。そりゃあ映画化されるぐらいだからそうなんだろうけれど。
 で、映画化ってところで、今回のこの小説も結構映像的だった事を思い出す。
 表現や文体、構成が非常にシーンをイメージしやすいとかそういう事より、あのシーンのあのタイミングでちょっとグラマラスな女子社員が出てくるというのが特にそう感じさせた。本当に映像化狙って書いてんじゃないか。もしかしたら、具体的にどこかでそんな話があるんじゃなかろうか。ちょっとあざとい気がしないでもない。著者の前職がコピーライターと聞いてますます鼻白む。
 待てよ・・・とすると、小説中にたまに出てくる「げろげろ」という既に死語と化した否定語が出てくるが、あれも映像化を前提に考える策略か。
 また、流行らそうとしてるんじゃないか、「げろげろ」。

 考えすぎか。

神様からひと言
荻原 浩 / 光文社
ISBN : 4334738427
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by skullscafe | 2006-05-22 23:59 |

『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』

『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』読了。
長谷川泰子の自由奔放な生き方に驚嘆する。
“自由奔放”が服を着て歩いているとすれば或いは彼女のような姿になるのやたも知れぬ。在るものを在るがままに受け入れ、そして、己の気持ちに恐ろしいほど素直に純粋に従う。
そうだ、インスピレーションに従って生きている。 見ようによっては魅力的で退屈しらずでやりたいことをやっていて羨ましく思える。
しかし、なかなかああいう生き方は出来ない。世間体が邪魔したり、自分の中にある常識が壁になったり。もっと現実的に経済面で困難が生じたりする。
普通の人はそれらからもたらされた問題を抱えた状態を指し“不幸”と呼ぶ。或いは“逆境”“挫折”。
ところが彼女にはそれらの言葉は当てはまらない。そういう場に幾度も幾度も対面しているはずなのだが、それらの言葉を当てはめるには抵抗がある。だからといって上手い手段を思い付き、もしくは捻りだしてくその場をくぐり抜けてきた風でもない。不遇でありながら不遇でない。何故か。
恐らく、彼女は前述したように在るものを在るがままに受け入れているからだ。貧乏は貧乏としてただ受け入れた。金がなければ無いなりで多くを望まない。不幸のみならず、幸せすらも不幸と同等に受け入れている。裕福な時代にはお金があればあるがままに使う。無くなればまた無いなりに。伴侶を得てもそれに固執しない。居れば居る居なければ居ないなりだ。在るがままとはまさにこの事。己の事は己で判断し、それにより生じた結果は結果としてただ受け入れたのだ。 言うなればクールビューティ、別名、無頼派。中原中也をして『彼女はまっすぐい!』と言わしめた女性。
長谷川泰子に女性の強さと怖さそして本質をみるような気がしてゾッとする。
余談だが僕はこーゆータイプの女性に惹かれる体質らしく、数少ない恋愛体験を思い出すと大抵女の子に振り回されている。ある側面においては僕はかの“口惜しい人”と似たタイプなのかもしれぬ。
人は言う。
「そんな娘ばかりではないよ」
と。
本当だろうか。ならば次に付き合う事があれば、相手の方は長谷川泰子タイプでない事を願う。あれはホントに疲れるから。
しかし、僕は友人の言うことにいささか懐疑的である事もここに記しておこう。


中原中也との愛―ゆきてかへらぬ
長谷川 泰子 村上 護 / 角川学芸出版
ISBN : 4044060010
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by skullscafe | 2006-04-01 14:16 |

『ラッシュライフ』

ラッシュライフ
伊坂 幸太郎 / 新潮社
ISBN : 4101250227
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『ラッシュライフ』伊坂 幸太郎
読了。

 この物語の構成、大好き。群像劇で、個々はそれぞれの物語を持っているけれど、それぞれが何処かしらでリンクしている。良いね、良いね。イ~ネ。
 この本を貸してくれた友人はツマランと言っていたが、なかなかどうして、面白いよ。『死神の精度』よりこっちのほうが好きだな。
 が、あんまり感想的なものが出てこない。読んで何かが後々残るってのも良いけれど、文字を追っていくその場の快楽、ってのもあるのかもね。だとしたら、この本は後者の本だ。

 この伊坂さんは『陽気なギャングが地球を回す』って本書いてんのね。今度映画やる。










■今日のBGM■
『Live Through This』
Hole
カート・コバーンの奥さんのバンド。
カッコイイなぁ。そりゃあオッパイも出すわ。
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by skullscafe | 2006-03-19 20:25 |

『死神の精度』

『死神の精度』読了。
死神の精度
伊坂 幸太郎 / 文藝春秋
ISBN : 4163239804
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ある時は恋愛小説風に、ある時はロード・ノベル風に、ある時は本格推理風に……様々なスタイルで語られる、死神の見た6つの人間模様
・・・なのだそうだ。

 死神は人間の生死を決める。但し、これは死神にとって仕事である。その人間が死ぬに相応しいかどうかを対象となった人間にコンタクトをとり、交流し、『可』『見送り』で判断する。
 えんどコイチの漫画『死神くん』(面白かったよな)を嫌が応にも思い出してしまう。
 死神の話という事は人の生死が関わってくるのだが、とてもライトなテイスト。漫画を読んでいるのと同じような感覚で読んでいける。そして、何処と無くハートウォーミング。
 それぞれの話にはあまりオチ的な要素はない。死神が憑いていて結局は死ぬのだから結末は言うまでもあるまい、と言うことなのだろうか。あくまで、死ぬまでの人間模様が重視されているので問題ないのかもしれないが、尻切れトンボ感が残る。
 ただ、この死神の音楽好きなキャラクターはちょっと好きだ。
 特に分け隔てなく音楽を聴くのが好きで、どんな音楽でも音楽であれば良い。(なんとなく僕のスタンスに似ている。まぁ、僕のはただの知識不足で漫然と聞いているだけなのだが)音楽となると、いつものクールさも瓦解して「ミュージック!」と叫んでいる姿が微笑ましい。
 話的には、ラストの話が一番良かった。穏やかでただそこにある日常の中で人間と死神の交流が好ましい。



 ところで、今日CDを買った。
ベント・ファブリック『JUKEBOX』。
 81歳のおじいちゃんピアニスト、ベント・ファブリックが、若者ヴォーカリストとコラボした1枚。
 音は今風に仕上がっている。ピアノの音が瑞々しくてハッとさせられる。これをおじいちゃんが弾いてるのか・・・。おじいちゃんのアルバムで踊るのも良いかもしれない。
「ミュージック!」
ジュークボックス
ベント・ファブリック / ユニバーサルインターナショナル
ISBN : B000E6GD8I
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by skullscafe | 2006-03-09 23:52 |

『空中庭園』

カツチューです。どうも。
カツジチュードクです。

『空中庭園』読了。
平積みされた文庫本から聞いたことのある題名だったので、選んでみたのだが、また“闇”の話だった。
 これ、『疾走』の後に読んだというのはなかなか面白い体験だった。
 あるダンチに住む家族の話なんだが、物語の構成がステキ。章節の分け方が1章は長女視点、2章は父親視点、というように、1つの家族を個人個人から描いている。バラバラのピースを繋ぎ、1つの物語を作っている。こういうの、好みだ。
 1つ屋根の下、あったか家族で暮らしているが、個人個人を覗くとグチャグチャのドロドロだ。ちょっと間違えれば一家離散になってしまうかもしれない。
 ところが、描かれる文体も、登場人物本人達も飄々(ひょうひょう)としていて実にドライ。家族の前では家族を演じている。本当の自分は見せない。いわば、仮面家族。
 『疾走』では重い文体で、登場人物たちは苦しみに苦しみ抜いている。ところが、『空中庭園』の登場人物ときたら自分の事も何となく他人事だ。父親に至っては浮気相手との修羅場で相手に色々言われ続けながらも「うわー逃げてぇ」と頭の中で呟く妙な余裕さえ見せる。危機感の欠如とさえ捕らえられる。
 しかし、これはこれでリアルで、淡々と描きながら実は皆個々で闇を抱えて生きている。むしろ自分から闇を抱え込もうとしているように見える。『疾走』では登場人物は選ぶ間もなく闇に引きずり込まれた感じだったが、この明るさが出るのはその違いなんだろうか。
 みんなどんなもの抱えて生きてるかなんて表面上では分からない。人が聞くとトンチンカンな言動をはく人がいたとしても、実はその言葉が出てくるにはとんでもなく重たいバックグラウンドがあってのことかもしれない。
 お互い分かり合えていると思っていてもそれはもしかしたら幻想なのかもしれない。
 でも、それはまた皆が信じたがっている幻想なのかもしれない。
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by skullscafe | 2006-03-06 00:57 |

『疾走』

 最近、帰りの電車での過ごし方が多少まともになってきた。ただ本を読んでいるだけなんだが、時間は無駄にしてない気がする。
 逆にまともでなくなったとも言える。活字に飢えて来た。手元に何か読む物がないと落ち着かない。

 そんな中、『疾走』(重松 清/角川書店)読了。全2巻。
 感想の前に、普通の本て素晴らしい。“まともな”文庫本は持ちやすい物なのだ。それに、終わりが見える。京極夏彦を読む行為がマラソンならば今回の本など600m走のようなものだ。悪く言っているわけではないよ。あれはあれで迫力があって良いのだ。
 誰か曰く『良い本はその厚さに比例する』。逆に分厚くなくても良い本は沢山あるけれどね。

 『疾走』はある男の子が、ズルズルとそして徐々にスピードを上げながら闇へと疾走する物語だ。
 まず、1ページ目を読んでひるんだのが、物語を進行していく視点が『おまえ』という二人称だったことだ。
 大抵は一人称か、三人称の視点が多いと思うが、ここでは『おまえ』が物語の視点となっている。語りかけられているかのような錯覚。多少戸惑うが、これが物語の中へと導いていく。それと同時に、この語りかけているのは誰なのかという疑問がまた物語を読み進む原動力となっていく。
 内容は、“闇”である。事の発端は個人の些細な問題。しかし、当人にとっては抱えきれないほど大きな問題。そして、周囲の・・・例えば家族・・・救済の仕方が分からず手をこまねいているうちに、個人の問題が周囲を飲み込んでいく。そしてそれはいつしか、個人の問題でなく集団の問題となり、コミュニティの問題となり社会の問題へと成長していく。どんどん疾走していく。一度加速していくと止まらない。読者は犯罪の成長の仕方を見ることになる。
 この本を貸してくれた友人は、
「酷すぎる。」
と言った。
 その感想は「飛躍しすぎる」ともとれた。
 しかし、僕は不思議とそうは思わなかった。むしろ、「起こりうる」と感じた。
 皆、死や犯罪は自分と無関係だと思っている、いや、そんな事も感じずに想像さえせずに日々を過ごしているんじゃないか。でも、案外そうじゃないことを僕も知っている。それはコインの裏と表のように背中合わせで存在している。そして何かの拍子でそちら側にひっくり返る事だって現実に“起こりうる”のだ。シュウジのように。
 そして、疾走し始めると他と一気に“孤立”し始める。“孤独”になる。“ひとり”になる。その中で、他とのつながりをあきらめるか、他との繋がりを求めて足掻くか。
 僕ならばどうするだろうか。その疾走する孤独な世界の中では、他との繋がりを感じるためにナイフで人を刺すことも正当な行為に思われるかもしれない。セックスをするかのように、体内にナイフを埋めていく事で繋がりを感じてしまうかもしれない。
 もちろん、ナイフで人を刺さなければ繋がりが感じられないわけではない。セックスも必要ない。側にもう一人いてくれるならば。側にいなくとも『おまえ』に声をかけ続けてくれる人がいるのを感じられるなら。一人ではない。ひとりとひとりが一緒になればひとつになれる。もうひとりではない。
 この物語は確かに不幸へとひたすら落ちていく物語だ。孤独へと落ちていく物語だ。読み進むのがしんどいところもある。しかし、何か“許し”が設けられている。文中によく聖書からの引用があるからではない。気がつくと、やっぱりシュウジはひとりではなかったのだと思う。もし、彼がやっぱりひとりであったとしても、それは不幸のままではない。彼によって、人と人とのつながりが生まれていくからだ。それはまるでキリストが死んでなお人々を繋いでいったかのようだ。
 残酷な物語だが、実は愛情に溢れている。人間賛歌。丁寧な構成になっているのもまた好感がもてる。





疾走 上
重松 清 / 角川書店
ISBN : 404364602X
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疾走 下
重松 清 / 角川書店
ISBN : 4043646038
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で、こーゆーのが好きな人は下記のような本など読んでみると良いかもしれない。


嫌われ松子の一生
山田 宗樹 / 幻冬舎
ISBN : 4344009142
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僕のなかの壊れていない部分
白石 一文 / 光文社
ISBN : 4334923631
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共生虫
村上 龍 / 講談社
ISBN : 4062736969
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青春の門〈第1部 筑豊篇〉
五木 寛之 / 講談社
ISBN : 4061845950
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ひげよ、さらば―猫たちのバラード〈上〉
上野 瞭 / 新潮社
ISBN : 4101003319
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ひげよさらばは、NHKで昔人形劇やってたヤツの小説版。暗い。猫が主人公。暗い。
NHKの人形劇の主題歌、シブがき隊だったなぁ。
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by skullscafe | 2006-03-04 02:29 |